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ミトコンドリアトレーニング ―筋肉中心で考えるトレーニングサイエンス―

出版社:市村出版
【サイズ】B5判
【ページ数】190P
2024年5月発行
 

編著者

八田秀雄 東京大学大学院総合文化研究科身体運動科学研究室 教授

著者

榎木泰介 大阪教育大学教育学部教育協働学科 准教授
加藤弘之 味の素株式会社スポーツニュートリション部 開発企画グループ長
北岡 祐 神奈川大学人間科学部スポーツ健康コース 教授
盒狂也 東京大学大学院総合文化研究科身体運動科学研究室 助教
高橋祐美子 東京大学大学院総合文化研究科身体運動科学研究室 准教授
竹井尚也 日本女子体育大学附属基礎体力研究所 助教
竹村 藍 立命館大学総合科学技術研究機構 専門研究員
田村優樹 日本体育大学体育学科 准教授
寺田 新 東京大学大学院総合文化研究科身体運動科学研究室 教授
星野太佑 電気通信大学大学院情報理工学研究科 共通教育部 准教授
増田紘之 新潟医療福祉大学健康栄養学科 助教
松永 裕 久留米大学 人間健康学部 スポーツ医科学科講師
見寺(吉田)祐子 金沢大学先端科学社会共創推進機構 特任助教
向井和隆 日本中央競馬会 競走馬総合研究所運動科学研究室 室長
(五十音順)



ミトコンドリアトレーニングという変わったタイトルの本ができました。どうしてこんなタイトルとなったのか少し説明させていただきます。私が運動生理学を学び始めたのは、大学3年生になった1980年です。その頃LT(当時はATという呼称が一般的)の測定が行われ始めていました。実習授業でそのメカニズムを学ぶ機会があり、「その閾値から酸素供給が足りなくなって無酸素運動になるので、血中乳酸濃度が上がる」という説明でした。それならばその閾値からは酸素摂取量が頭打ちになるのだろうと私は思いました。ところが説明では、「その閾値を超えても酸素摂取量は運動強度に比例して上がっている」ということです。これはおかしい!と思いました。酸素摂取量が運動強度に比例して上がるということは、どう考えてみてもその閾値から上の強度でも酸素は必要量が供給されているとしか思えません。また酸素摂取量が強度に比例して増加しているのに、その閾値から上が無酸素運動という説明自体が矛盾しています。この疑問は、私がその後乳酸のメカニズムに関する研究を継続してきた大きなきっかけとなっています。
大学院修士の時に動物実験を開始することになり、それで私は乳酸のメカニズム解明に関する研究を始めました。そこでまず困惑したのは、ラットやマウスの安静血中乳酸濃度が異様に高い、ということです。運動もしていないのに、ヒトの手や実験環境に慣れてなく興奮している動物から採血すると、安静の血中乳酸濃度が4―5ミリモルという、本来はある程度強度を上げた運動をしないと上がらないレベルに安静なのに動物の血中乳酸濃度が上がってしまいます。
この2つの例は、血中乳酸濃度の上昇を酸素供給だけで考えることはできないということをはっきり示しています。乳酸の産生を大きく決める糖の分解は、酸素供給に必ずしも関係なく、かなりアバウトに運動強度などの変化やストレスに対して大きく反応することがあると考えるのが妥当です。元々糖の分解をする酵素は細胞の中でも細胞質にあって、ミトコンドリアは進化の過程で後から細胞に入ってきたと考えられるわけですから、糖の分解が酸素供給にはよらないで、いわば独立して反応するようになっていると考えるのは自然ではないでしょうか。乳酸は糖を利用しようとするときに、細胞質で独立に糖が分解された結果としてできて、また同時に少しだけATPも供給し、そして結局はミトコンドリアで酸化利用されるエネルギー源です。乳酸ができる運動は無酸素運動ではなく、糖を多く使おうとしている運動ということです。
酸素摂取量は運動生理学の重要な柱であることは事実ですが、酸素摂取量はあくまで肺でのことであって、筋肉のことを直接全て反映するわけでは必ずしもありません。特に短距離走や中距離走のような高強度運動では、肺の酸素摂取量だけでは作業筋の代謝様相や酸素消費量は分かりません。またトレーニング効果についても、最大酸素摂取量が増加するかのみで考えて、筋肉の要素が考慮されないことも多いと思います。酸素摂取量によってすべて筋肉のことまで説明しようとすることには無理があります。筋肉では常に酸素も使ったATP産生が行われています。すべての運動は有酸素運動であって、無酸素運動といったものはあり得ません。そうすると筋肉のミトコンドリアが運動のエネルギー供給における中心になりますし、運動トレーニングによる効果の中でも大きな柱が、ミトコンドリアの量や機能が増えるということになります。
このような、これまでの研究生活でできてきた私の考え方から、運動とそのトレーニング効果についてまとめた本書のタイトルを、ちょっと変わってはいるが「ミトコンドリアトレーニング〜筋肉中心で考えるトレーニングサイエンス」になったのも、あるいはご理解いただけるでしょうか。

2024.1

八田 秀雄

【目次】

はじめに

吃堯.潺肇灰鵐疋螢適応の基礎

1章 筋肉で考えるエネルギー代謝とミトコンドリアトレーニング    八田 秀雄 
 1.酸素摂取と最大酸素摂取量
 2.運動強度と血中乳酸濃度
 3.乳酸産生をどう考えるのか 
 4.LTも筋肉で考える
 5.高強度運動も有酸素運動
 6.高強度インターバルトレーニングはミトコンドリアトレーニング
 7.運動のエネルギー代謝を筋肉で考える

2章 トレーニングによる骨格筋ミトコンドリアの量的制御    田村 優樹   
 1.はじめに:なぜ,トレーニングによる適応のメカニズムを分子レベル・細胞レベルで理解することが重要なのか?
 2.骨格筋のミトコンドリアの量や機能を高める生理的意義:なぜ骨格筋のミトコンドリアの量・機能を高めることが必要なのか?
 3.遺伝情報(DNA)から身体の部品(タンパク質)を作り出す仕組みの基礎
 4.トレーニングによって骨格筋のミトコンドリアの量が増加する分子メカニズム
 5.ミトコンドリアの分解と分子メカニズム

3章 抗酸化能力とミトコンドリア    北岡 祐
 1.運動による活性酸素種の産生
 2.活性酸素と筋収縮
 3.抗酸化酵素と抗酸化物質
 4.酸化ストレスとは
 5.抗酸化応答の分子メカニズム

4章 乳酸によるミトコンドリア適応    高橋 謙也
 1.乳酸シグナル説の背景
 2.乳酸による骨格筋ミトコンドリアの量的変化
 3.乳酸による骨格筋ミトコンドリアの機能的変化
 4.乳酸による骨格筋ミトコンドリアの適応メカニズム
 5.乳酸濃度の薬理的操作
 6.サプリメントとしての乳酸の可能性
 7.乳酸がさまざまな組織に与える効果

5章 乳酸輸送担体から考えるミトコンドリア適応    見寺(吉田)祐子   
 1.乳酸シャトル
 2.ミトコンドリアでの乳酸代謝の重要性
 3.ミトコンドリアにおけるMCTの局在
 4.ミトコンドリアとPGC-1αとMCT

局 トレーニングによる適応

6章 LTを主体にミトコンドリア適応を考える 〜長距離走のトレーニング〜    増田紘之.八田秀雄
 1.量と強度の兼ね合いをどう考えるのか
 2.長距離のエネルギー供給系は,ミトコンドリア酸化系
 3.長距離走のトレーニングは,LTを主体に考える
 4.選手に持久的トレーニングはLTを超える強度が2割程度が一般的

7章 高強度インターバルトレーニングによる骨格筋ミトコンドリアの適応    星野 太佑
 1.高強度インターバルトレーニングとは、その定義
 2.高強度インターバルトレーニングによるミトコンドリアの適応
 3.高強度インターバル運動中の代謝、細胞応答とミトコンドリア適応の分子メカニズム
 4.トレーニングの強度と量および形式の重要性 ―MICT,HIIT,SITの比較―
 5.筋線維タイプの違いによる影響
 6.高強度インターバルトレーニングによる乳酸代謝の適応とミトコンドリア
 7.高強度インターバルトレーニングの注意点

8章 低酸素環境下での運動トレーニング    竹井 尚也
 1.低酸素トレーニングの分類
 2.Live-high train-high法(LHTH法)
 3.Live-high train-low法(LHTL法)
 4.Live-low train-high法(LLTH法)
 5. 低酸素暴露による生理学的適応
 6.低酸素暴露によるエネルギー代謝の応答および適応
 7.低酸素トレーニングによる乳酸代謝の適応

9章 レジスタンストレーニング    榎木 泰介  
 1.レジスタンストレーニングの規定因子
 2.1RMの利用とレジスタンストレーニングの効果
 3.RTの狙いとエネルギー代謝
 4.RTによる体内の変化
 5.RTのエネルギー代謝
 6.RTによるミトコンドリアへのトレーニング効果

10章 サラブレッドのトレーニング    向井 和隆
 1.サラブレッドの育成期のトレーニング
 2.サラブレッドの低酸素トレーニング
 3.サラブレッドの高強度インターバルトレーニング
 4.サラブレッドのディトレーニング

11章 生活習慣病におけるトレーニング効果    竹村 藍
 1.生活習慣病の発症と予防
 2.糖尿病の種類と特徴
 3.糖尿病における運動の重要性
 4.糖取り込みにおける骨格筋の役割とトレーニングの効果
 5.2型糖尿病と骨格筋ミトコンドリア

敬堯 ̄浜楡歇茲肇肇譟璽縫鵐阿砲茲訶応

12章 糖質摂取とトレーニング    高橋 祐美子 
 1.骨格筋における糖のエネルギー産生(ATP合成)への利用
 2.トレーニングによる糖のミトコンドリアでの利用に関する適応
 3.数日〜数週間の糖質摂取量の変化が糖のエネルギー産生への利用に与える影響
 4.絶食等による糖の貯蔵の低下がトレーニングによるミトコンドリア適応にもたらす影響
 5.運動後の糖質のエネルギー産生への利用や骨格筋グリコーゲン回復と栄養

13章 脂質摂取とトレーニング    寺田 新
 1.高脂質食と骨格筋ミトコンドリア
 2.低脂質食と骨格筋ミトコンドリア
 3.中程度脂質食と骨格筋ミトコンドリア

14章 たんぱく質、アミノ酸摂取とトレーニング    加藤 弘之
 1.運動時のたんぱく質・アミノ酸摂取の3つの意義
 2.運動選手のたんぱく質・アミノ酸摂取量に関する研究動向
 3.持久運動選手におけるたんぱく質・アミノ酸摂取の意義と可能性

15章 トレーニング休止に対する栄養の効果    松永 裕
 1.トレーニングの休止が身体に与える影響
 2.トレーニングの休止がミトコンドリアに与える影響
 3.トレーニングの休止に対する栄養摂取の効果 ―ミトコンドリアの生合成の観点からー
 4.トレーニング休止に対する栄養摂取の効果 ―ミトコンドリア分解抑制の観点からー

商品コード : ichi_0046
価格 : 3,960円(税込)
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