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アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学
〜トレーニングに普遍的な正解はない〜

出版社:市村出版
【サイズ】B5判
【ページ数】220P
【図・写真】185点
2021年2月発行

著者

山本 正嘉

はじめに

「科学的なトレーニング」という言葉がしばしば使われます.響きがよいために,意味が曖昧なまま,無造作に使われすぎているように思います.そして,実践者である選手・コーチ・トレーナーも,その支援者である研究者も,この言葉に振り回されているように感じます.
改めて,科学的なトレーニングとは何でしょうか? 私は体育大学でトレーニング科学という授業を担当しています.学生たちにこの質問をすると「科学的に効果のあることが証明された方法で行うこと」という答えが多く返ってきます.この答えは一面では正しいのですが,抜け落ちている大切なことがあります.
それは,科学は普遍性を求めるために個別性を切り捨ててしまう性質がある,ということです.科学的に効果の証明されたトレーニング法とは,平均値的には正解であっても,個人にとっては必ずしも正解ではありません.特に,レベルの高いアスリートほどそう言えます.
アスリートやコーチは,一般的な正解は頭に置いた上で,自分の個別性に合致する独自の答えを見いださなければなりません.研究者の側でも,その点をきちんと実践者に伝えなければなりません.しかし両者とも,これまでは普遍的な正解を求めることに注意が向きすぎていました.
その結果,トレーニング科学は知識体系としては著しく発達しました.しかし,各人が現場で活用する「実践の学」という面では停滞しています.アスリートについていえば,自分で考えるべき個別性の部分も,科学が答えてくれるものと考える人が増えたように感じます.これでは科学が新興宗教のようになってしまいます.
このような背景を受けて本書を執筆しました.平均値的な正解の紹介は最小限にとどめ,実践現場の人が科学の考え方を活用しながら,自らの手で競技力向上を実行していけるように構成しました.特に,アスリートが本書を参考にしながら,現状の改善に取り組んで頂けたらこんな嬉しいことはありません.
体育・スポーツの分野で学ぶ大学生や専門学校生には,入門的な教科書かつ教養書となるようにも配慮しました.スポーツ分野に進みたいと考えている高校生やその保護者,スポーツやトレーニングの一般的な愛好者,そして研究者にも読んで頂ければと思います.
二つとはない自分の身体を,自身の手でよりよく変えるためのヒントとして,本書が役立つことを願っています.

2020.7.

山本 正嘉

目次

吃堯ゥ肇譟璽縫鵐阿鮖呂瓩訌阿

吃堯檻云蓮ゥ肇譟璽縫鵐阿防疂彭な正解はない
・トレーニングの常識は時代とともに変わる
・昔のトレーニングは野蛮?
<コラム-1> 体育大学生へのアンケート調査に見るトレーニング法の時代変遷
・短距離走選手の場合
・長距離走選手の場合
・水分補給の場合
<コラム-2> なぜ飲むなと言われたのか
・一流選手には通常の基準があてはまらない
・科学も回り道をする
・トレーニングに普遍的な正解は存在しない
・常識を変えないと勝てない
<コラム-3> うさぎ跳びは悪いトレーニングなのか?
[まとめ]

吃堯檻仮蓮ゥ肇譟璽縫鵐阿箸浪燭世蹐Δ?
・トレーニングの意味は「引っ張る」こと
・やるべきことは一人一人で違う
・目的地と現在地とを可視化することから始まる
<コラム-4> 「見える」ことの大切さ
・中学生サッカー選手の例
・PDCAサイクル
<コラム-5> 4行日記
・トレーニングの原則
・物理法則との違い
・正解がないことを前提に考えよう
<コラム-6> 正解のない世界に対処するための教養書
・トレーニングの原則との付き合い方
[まとめ]

吃堯檻馨蓮ゲ奮悗箸浪燭世蹐Δ?
・科学に対する一般的なイメージ
・科学に期待するのは予測能力
・科学の方法論:記述→説明→予測→操作
・法則がわかると発展が加速する
・科学的に効果の証明されたトレーニングが生まれるまで
<コラム-7> 図と表の見方
・対照実験の有用性
・対照実験の限界
<コラム-8> 成功する確率が何%のトレーニングならば採用するか?
・アスリートにとって現実的な科学のあり方とは?
<コラム-9> なぜ危険率を5%水準にするのか
・アスリートの科学的トレーニングとは自分の身体で対照実験を繰り返すこと
<コラム-10> エビデンスのレベル
・2種類の科学があると考えよう
[まとめ]

1部−4章.科学的なトレーニングの具体例
・実用性の高い第2種の科学的トレーニング
・自転車競技選手の例(例1)
<コラム-11> 「汝自身を知れ」
・サッカー選手の例(例2)
・長距離走選手の例(例3)
<コラム-12> オーバートレーニングを回避する
・バレーボール選手の例(例4)
<コラム-13> 科学の原点は言葉
・バスケットボール選手の例(例5)
・日常生活も含めて可視化する(例6)
・可視化することで視点が倍増する
・最も重要なのは「記述」
・科学的なトレーニングとただのトレーニングとの違い
・予測精度を上げるには?
・科学的なトレーニングのあるべき姿とは
[まとめ]

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局堯1章.専門練習と補助トレーニング
・専門練習だけでは頭打ちになる
・市民マラソンの例
<コラム-1> 動作のコツをつかめば短期間でもパフォーマンスは改善する
・補助トレーニングの性質
<コラム-2> 筋のトレーニング法に関する用語の整理
・誤った補助トレーニング
<コラム-3> 大リーグボール養成ギプス
・特異性と過負荷の二律背反性(トレードオフ)
・補助トレーニングの様々なかたち
・補助トレーニングを成功させるための心構え
・開放運動連鎖と閉鎖運動連鎖
・体操競技選手の考え方
・エルゴメーターを用いた模擬トレーニングの得失
・力への過負荷とスピードへの過負荷
<コラム-4> 50年前の子どもの遊び
・補助トレーニングを行う際の着眼点:身体能力の3次元展開
[まとめ]

局堯2章.力(ちから)のトレーニング
・力の発揮を規定する要因
・力発揮の心理的限界と生理的限界
・10RMトレーニング
<コラム-5> 筋力トレーニングの「期分け」
・筋力を増加させることで得られる波及効果
・筋肥大のしくみ
・筋力トレーニングの留意点
・栄養と休養の大切さ
・運動・栄養・休養をどう最適化するか
<コラム-6> 朝食を食べずに運動するとどうなるか
・疲労と超回復
<コラム-7> 炭水化物の優先性
・大学生アスリートの注意点
[まとめ]

局堯3章.スピードとパワーのトレーニング
・力型とスピード型の種目
・スピードの発揮を規定する要因
<コラム-8> サイズの原理
・筋線維組成
・スピードへの過負荷を意識する
・単発パワーと反復パワー
・反復パワーのトレーニング
・敏捷性(アジリティ)のトレーニング
・バネとは
<コラム-9> 剣道選手とバネ
・バネのトレーニング
・バネを効果的に発揮する技術
<コラム-10> 長距離走選手とバネ
[まとめ]

局堯4章.持久力のトレーニング(1)ローパワーの持久力
A.持久力の分類
・ほとんどの種目で持久力は必要
・連続的な持久運動と間欠的な持久運動
・エネルギー系との関わり(1)連続的な持久運動の場合
・エネルギー系との関わり(2)間欠的な持久運動の場合
・3種類のエネルギー系とその性質
・ローパワーの持久力とハイパワーの持久力
<コラム-11> 高所トレーニング
B.ローパワーの持久力とそのトレーニング
・ローパワーの持久力を生み出す仕組み
・最大酸素摂取量(VO2max)
<コラム-12> 長距離走とランニングエコノミー
・VO2maxのトレーニング方法
・乳酸閾値(LT)
<コラム-13> 箱根駅伝選手のLT
・LTのトレーニング方法
・トレーニングゾーン
・トレーニングゾーンの組み立て
・最適解は自分で見つけることが必要
[まとめ]

局堯5章.持久力のトレーニング(2)ハイパワーの持久力
C.連続的なハイパワーの持久力とそのトレーニング
・十種競技の日本チャンピオンの能力
・種目による特性
・3種類のエネルギー系の動員様式
<コラム-14> 乳酸発生から見た中距離走と長距離走との違い
・エネルギー系の発達に見られるトレードオフ現象
・3系の能力とパフォーマンスとの関係(1)ある時点での発揮パワーに対して
・3系の能力とパフォーマンスとの関係(2)ある時点までの総仕事量に対して
<コラム-15> ペース配分により仕事のアウトプットは変わる
・トレーニング時に配慮すべきこと
<コラム-16> 運動時間の長短による疲労要因の違い
D.間欠的なハイパワーの持久力とそのトレーニング
・種目による特性
<コラム-17> 間欠的なハイパワーの持久力テスト
・3系の能力とパフォーマンスとの関係
・間欠的な運動におけるエネルギー系の役割分担
・トレーニング時に配慮すべきこと
E.ハイパワーの持久力を効果的に改善するために
・エネルギー系の優先順位を考える
・ATP-CP系のトレーニング
・有酸素系のトレーニング
・乳酸系のトレーニング
・インターバルトレーニング
・自分でトレーニングの戦略を考えてみよう
[まとめ]

敬堯ゥ肇譟璽縫鵐阿魑述する

掘1章.測定と評価のリテラシー
・なぜ測定をするのか?
・データからどのように情報をくみ取るか
<コラム-1> 測定の難しさと、測定結果の解釈の難しさ
・データの解釈は一通りには決まらない
<コラム-2> データとコーチの「眼力」
・ある短距離走チームの取り組み事例
・データを活用するためのポイント
・客観データと主観データとを組み合わせて読み解く
・フィードバックシートとその活用
・ルーブリック評価
<コラム-3> 主観評価の信頼性
・トレーニング科学に独自の3つの立脚点
[まとめ]

掘2章.トレーニングのレポートを作成する
・トレーニングを言語化することの意義
・書こうと努力することで、わからなかったことがわかってくる
・書くことで、他者からのアドバイスを受けられる
・会話と文章
<コラム-4> 現象を言語化することの限界
・トレーニングレポートの組み立て
・バスケットボール選手の例(例1)
・剣道選手の例(例2)
<コラム-5> トレーニング科学とトランスサイエンス
・長距離走選手の例(例3)
・図や表を使うことの効果
・レポートは科学論文の卵
・レポートから論文へ
<コラム-6> 指導者から選手への声かけに置き換えた本書のまとめ
・事実と意見とを区別しよう
[まとめ]

索引

商品コード : ichi_0038
価格 : 2,970円(税込)
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