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トレーニングのための生理学的知識

出版社:市村出版
著者:Zsolt Radak 監訳者:樋口 満
サイズ B5判/ページ数 200p
2018年9月発行

【「トレーニングのための生理学的知識」日本語版出版にあたって】

私は「どうして日本に来て研究しようと思ったのですか」とよく質問されます.それは,ソニーの創設者の一人である盛田昭夫氏の著書「メイド・イン・ジャパン」を読んで,非常に大きな感銘を受けたからです.
私は筑波大学大学院博士課程の学生として来日して,浅野勝己先生(筑波大学名誉教授),大野秀樹先生(杏林大学名誉教授)などすばらしい先生方に巡り会うことができました.そして,博士の学位を取得後には,博士研究員として私を受け入れていただき,研究指導をしていただいた後藤佐多良先生(東邦大学名誉教授)とは,今ではよき友人となっています.その後においても,早稲田大学の樋口 満教授に巡り会えたことは幸いでした.樋口教授は私の研究活動を支援してくれており,よき友人となっています.
私は本書の出版に当たり,日本におけるすべての友人である先生方に,これまでのご支援と真の友情に対して,深甚なる感謝の意を表したいと思います.私にとりまして,日本が第二の故郷であるということは本当に幸せです.

I am often asked, why did you come to study in Japan? Well, I have red the book, titled Made in Japan written by the Sony founder Mr Morita. That book impressed me a lot! I was very lucky because I have learned from super professors during my time in Japan like Katsumi Asano and Hideki Ohno. I am so pleased that I can say that my post-doc supervisor Sataro Goto is a friend of mine now. Later on I was lucky again because I met with professor Mitsuru Higuchi who is a great supporter of me and a great friend as well. I would like to express my sincere thanks to all of my Japanese friends for their continuous support and true friendship! I am so happy that I can say that my second home is Japan!

ハンガリー体育大学教授 ジョルト・ラダック Rad?k Zsolt Dr.


【著者序文】

運動パフォーマンスについては,何世紀にもわたって注目されてきた.運動トレーニングは,古代オリンピック競技に参加する競技者の日々の活動において必須であった.また,運動パフォーマンスに及ぼす食事の重要性については千年以上にわたって認識されてきている.科学的な運動トレーニングの出発点は1860年に米国で出版された運動生理学の書籍であるといえるだろう.1891年にハーバード大学の運動生理学研究部門によってはじめて,科学とスポーツパフォーマンスが融合された.デンマークの生理学者であったA.S. クローは骨格筋の毛細血管制御メカニズムの解明に関する研究で1920年にノーベル賞を受賞した.また,ケンブリッジ大学のA.V. ヒルは1922年に筋のメカニカルワークの発見でノーベル賞を受賞している.20世紀における科学的発見は競技パフォーマンスに非常に大きなインパクトを与えた.古代オリンピックに比べて近代オリンピックにおける競技パフォーマンスが著しく高いのは,科学的発見に基づいた計画的なトレーニングプログラムのおかげである.実際のところ,科学的研究は現代の運動トレーニング計画において必須となっている.
スポーツ科学は運動,卓越した競技パフォーマンス,そして健康に焦点を当てている.20世紀の半ばから,日々の身体活動は,科学技術の発達によって日常生活から次第に消滅していき,先進諸国においては,身体不活動に置き換わってしまっている.身体活動は人体の遺伝的進化に影響する要因であったので,今日の身体不活動はライフスタイルと遺伝的特質の間のバランスを乱してしまっている.生活習慣病が出現し,スポーツ科学を含む諸科学が,身体運動の疾病予防に果たす役割に注目してきている.初期の研究としては,レオナルド ダビンチが人体組織の解剖により,農民よりも貴族において,より血管変性が引き起こっていたという疾病予防に関する報告をしている.ダビンチは仮説を立て,研究し,観察結果を記録しており,ほぼ7000ページに及ぶ研究の一部は現存している.ダビンチはすでに16世紀において身体トレーニングの疾病予防効果を認識しており,今日の科学的研究によって,1970年代に彼の知見が再確認されたのである.今日では,身体不活動は生活習慣病の発症リスクを高めており,運動トレーニングは健康的な生活にとって必須である.また,身体不活動は平均寿命を短縮していることも明らかである.

2018.3.
Zsolt Rad?k Dr.


【監訳者のことば】

春の訪れが感じられるようになってはいたが,まだ雪が残り,郊外の湖には氷が張っており,今年のヨーロッパの冬が厳しかったことが想像されるブダペストから帰国したばかりである.
本書はハンガリー・ブダペストにある国立体育大学のジョルト・ラダック教授がハンガリー語で書いた「トレーニングのための生理学」の英語版の原稿を,私の研究仲間に依頼して翻訳したものである.本書はハンガリーのスポーツ指導者全員に配布されて,トレーニング理論のテキストとなっている.
ハンガリー語で書かれた本書を紹介されたのは,私が2017年2月にハンガリー国立体育大学から名誉博士の学位を授与され,その授賞式に招待されたときである.ラダック教授とは2009年にウイーンで開催された世界マスターズ・ボート大会参加の折に,ブダペストに立ち寄り,ドナウ川でボートを漕ぐお世話をしていただいてからの付き合いである.ラダック教授を紹介してくれたのは私の恩師であるワシントン大学(セントルイス, USA)医学部のホロスチー教授である.ハンガリー系アメリカ人であるホロスチー教授は運動生化学という学問分野を切り開いたパイオニアであり,世界的権威である.
ラダック教授は老化と関連する抗酸化機能に関する運動生化学の研究で世界的に著名であるが,彼は元陸上競技・槍投げの選手であり,その研究のために筑波大学に留学してきたが,運動生化学において博士の学位を授与されている.私がワシントン大学医学部に留学していたときの研究テーマが「運動による骨格筋の抗酸化酵素の適応的応答」であるので,私の研究についてもよく知っており,すぐに親しい間柄となることができた.それから頻繁に早稲田大学の院生を伴ってブダペストでの研究集会に参加しており,さらに親密な関係を築いてきた.ラダック教授には,ここ数年は早稲田大学スポーツ科学研究科の客員教授として,大学院生にトレーニングという視点から「運動生化学」を教授していただいている.
わが国のみならず世界的に,これまで多くの運動生理学の書籍が出版されているが,トレーニングという視点から書かれた(生化学を含む)生理学の書籍はなかったのではないだろうか.ぜひ,本書によってスポーツ選手やスポーツ指導者がこれまでの知識を確認するとともに,最新の知識を身につけていただき,競技パフォーマンスのアップに役立てていただければと,著者のみならず,すべての翻訳者は願っている.

2018年3月 ブダペストから帰国直後に研究室に
早稲田大学スポーツ科学学術院 教授
ハンガリー体育大学 名誉博士
樋口 満


目次

序章   Zsolt Rad?k
1章 細胞の基本的機能、細胞レベルでの適応、および代謝   樋口 満
1.細胞と細胞内器官
2.細胞レベルでの適応
3.代謝的プロセス
4.専門的知識
[練習問題]

2章 骨格筋,機能,筋線維タイプ   中谷 昭
1.筋収縮
(1)収縮のタイプ
2.筋線維タイプ.
3.腱と結組織
4.骨格筋と加齢
5.専門的知識
(1)筋線維タイプの測定・評価
(2)骨格筋の分子レベルでの評価指標
[練習問題]

3章 適応,表現型適応 ,疲労,オーバートレーニング   薄井澄誉子
1.ホメオスタシスと適応
2.疲労
(1)中枢性疲労と神経系疲労
(2)末梢性疲労と筋疲労
3.筋肉痛とオーバートレーニング
(1)筋肉痛
(2)オーバートレーニング
4.疲労回復と安静休息
5.トレーニングの原則
6.順応
7.専門的知識
[練習問題]

4章 筋力トレーニングの基礎   町田 修一
1.サルコメア(筋節)における発揮張力と適応
2.筋収縮の種類と力発揮
3.運動単位と筋力発揮
4.運動単位の同期性と筋力発揮
5.筋肥大
(1)力学的な諸要因
(2)ホルモン系の諸要因
6.筋力トレーニングの方法論
(1)最大筋力トレーニン
1)ピラミッド法
2)等尺性筋力トレーニング
3)等速性トレーニング
4)ボディービルディングメソッド
5)最大筋力発揮のための伸張性トレーニング
6)最大下および最大強度での筋力トレーニング
(2)爆発的筋力(瞬発力)
1)動的で多様性のある方法
2)クイック・リリーストレーニング
3)反応性トレーニング
4)補助もしくは抵抗(負荷)のための道具/トレーニングの状況
5)電気刺激
(3)筋持久力トレーニング
1)低負荷トレーニング
2)サーキットトレーニング
(4)筋横断面積増加のためのトレーニング
(5)神経筋協調トレーニング
(6)加圧トレーニング
(7)不安定面でのトレーニング(固有受容性感覚トレーニング)
7.専門的知識
[練習問題]

5章 持久性トレーニングの基礎   羅 成圭・川中健太郎
1.持久性パフォーマンスの主要因子としての心臓
2.持久性パフォーマンスの規定因子としての心臓血管系
(1)パフォーマンスの規定因子としての血液の酸素運搬能力
(2)動静脈酸素較差:効率
(3)最大酸素摂取量の規定因子としての末梢組織への酸素供給と血管新生
3.VO2maxを決定する主要な要因としてのミトコンドリアの含量と酵素活性
4.エネルギー供給機構が持久性能力に及ぼす影響
5.乳酸性作業閾値
6.持久性トレーニングの方法
(1)有酸素的な持久性トレーニングの方法
1)持続的な長時間の持久性トレーニング
2)ファルトレイク・スピードプレイトレーニング
3)有酸素的インターバルトレーニング
(2)無酸素性な持久性トレーニングの方法
1)無酸素性作業閾値でのインターバルトレーニング
2)無酸素性インターバルトレーニング
3)ミニ インターバルトレーニング
(3)高地トレーニング
7.専門的知識
[練習問題]

6章 複合的な身体能力としてのスピード   山元 健太
1.スピードの種類
(1)反応時間
(2)動作速度
(3)加速能力
(4)最大移動速度
(5)ブレーキング能力
(6)判断速度
(7)学習速度
2.瞬発力トレーニング
3.専門的知識
[練習問題]

7章 関節柔軟性の基礎   山元 健太
1.関節の柔軟性
2.筋と腱の伸張性
3.固有受容性神経筋促進法(PNF)
4.関節柔軟性を制限するその他の要因
5.専門的知識
[練習問題]

8章 食事とスポーツ   村田 浩子
1.食事と代謝
2.食事と有酸素的な持久的運動
3.食事と筋力とスピード
4.食事と体重階級制スポーツ
5.ビタミン,ミネラルと競技パフォーマンス
6.専門的知識
[練習問題]

9章 運動トレーニング と疾病予防   川上 諒子
1.全身持久力 と心疾患
2.全身持久力とがん
3.全身持久力と神経変性
4.全身持久力とメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病
5.専門的知識
[練習問題 ]

10章 運動トレーニングと老化   浅香 明子
1.序 論
2.老化の仮設モデル
(1)老化のError Catastrophe(エラーカタストロフィ)理論
(2)テロメア理論
(3)サーチュイン理論
(4)消耗理論
(5)フリーラジカル理論
(6)細胞膜理論
(7)アポトーシス理論(遺伝子危機による細胞死)
(8)生涯代謝量一定理論
(9)神経内分泌系支配理論
(10)免疫機能低下理論
3.老化における運動トレーニングとフリーラジカル
4.運動トレーニングと中枢神経系の老化
5.運動トレーニングと心血管の老化
6.運動トレーニングと加齢に伴う骨および筋の変化
7.専門的知識
[練習問題]

11章 スポーツ遺伝学   宮本(三上)恵里
1.エピジェネティック修飾
2.遺伝学とスポーツ
3.専門的知識
[練習問題]

12章 トレーニングの期分け   竹田 正樹
1.序論
2.目標設定
(1)1回のトレーニングセッションの構造と生理学
(2)ミクロサイクルの構造と生理学
(3)マクロサイクルの構造,機能およそ生理学
(4)持久性能力のためのマクロサイクル
(5)無酸素性持久力のためのマクロサイクル,高強度インターバルトレーニング,タバタプロトコル
(6)筋肥大のためのマクロサイクル
(7)爆発的筋パワーのためのマクロサイクル
(8)スピード能力を高めるためのマクロサイクル
(9)リハビリテーションのためのマクロサイクル
3.準備期の構造と生理学
4.試合期の構造と生理学
5.オフシーズンへの移行期とオフシーズン期
6.年間の期分けの構造と目的
7.球技系スポーツの期分け
8.専門的知識
[練習問題]

商品コード : ichi_0033
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